第2章 旅路

 

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 太陽は砂漠に燦々と強烈な陽射しを投げかけている。
 相変わらず夜に行動して朝から昼まで寝て、という不規則極まりない生活ではあったものの、シリウスはここ数日順調に馬に乗って旅を続けていた。
 夜はやはり怖い。暗闇が怖い。だから、夜は寝ずに行動して朝を待つのだ。
 空の端が明るみ始めると、不思議と太陽が心の奥底の暗い部分までもゆっくりと照らし出すような心地がする。
 夜は馬をひたすら駆って走りつつも、心の奥底ではやはりいろいろととりとめもないことをうじうじと考えてしまって、暗く沈みこんでいる。朝の訪れは、そんな自分の心の恐怖をいとも綺麗さっぱり払拭してくれる。
 もう、自分を守ってくれる人はいない。
 未だにシリウスには、独りであるという事実がこたえていた。正直、辛い。
 すべてが辛い。
 勇んで出てきたものの、何をすればいいのか、何をするべきなのか分からない。
 圧倒的なまでに雄大な自然は、全てを分からなくさせる。自分の命の危機すら希薄に感じさせる。
 なぜおれはここにいるのだろう?
 自分は王子で、本来ならば王宮でぬくぬくと暮らしているはずなのに。
 本当に何もかも分からない。
 どうすればいい? どうすればいい?
 どうすればいい――――――?

 ――――――いっそのこと、全てを投げ出してしまおうか?

 国のことや起こりうるかもしれない戦争のこともすべて。王宮にいたときは俄然「王子である自分が何とかしなければ」という使命感に燃えていたが、この雄大な自然を前にすると、すべてのことが些細な屑のように感じられてならない。
 王宮にいたときにはまだ現実感をともなって感じられていた諸々のことが、この大自然を前にすると、その現実感はすべて吹き飛んでしまうのだった。
 このまま自分が王子であるということがばれなければ、全ての責任を放棄してただの一国民として平凡ながらも幸せな人生を送ることができるのではないか?
 本気でそう思う。

「もう投げてしまおうかな……全てを……」

 我知れず漏れる呟き。


――――――もう、何もかもどうでもいい。

 

 

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