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「コンニチワ」
「だれよあんた?」
むっとした表情を隠しもせずに出迎えるのは、リザだ。フェオラの顔も厳しい。
「いいや。おれは単なるここの息子さ。んで、ちょっとした情報をもってるだけ」
「…………なっ!」
 一瞬にしてシーリスとフェオラの顔色が変わる。
「もちろん情報提供するよ? ―――――おれもいっしょにつれてってくれるならね」
 そう言ってにっこりと邪気のない笑いを浮かべるフェイに対してぶち切れたのは……………意外にも関係のないリザだった。

「ちょっとっ。それ、人にものを頼む態度じゃないわよ!」

「うるさいなぁ。あんたに用はないよ」

 その態度が余計にリザの怒りに火に油を注ぐ結果となった。
(―――――とっちめてやる!)
 そう思うや否や、精霊語で呪文の詠唱に入る。言葉の自由をなくしてやろう、というのである。

「あっ、あんたも精霊使いなんだ。珍しいねー」

 そう言うフェイの口調は楽しげだ。そして、その口から漏れるのは……………、

(―――――なっ………精霊語!?)

 相手の唱える呪文を聞いて、急遽リザは唱える呪文の内容を変更する。

(こいつっ………ここを燃やす気!? ばっかじゃないのーーーーーー!?)

 リザの唱える呪文の内容が変わったのに気づいて、フェイはひゅうっと口笛を吹く。

「真空にする気? こえっ。………でも、やるじゃん―――――」

(バカは放っておくに限る!)

(よっしゃ。完成した―――――!)


「アルカ・ドュ・ヒューリオウス!」

「エルハ・ビォ・ドゥマーサ!」


 呪文が完成したのはほぼ同時のようだった。同時に、一気にリザは風の力を―――――、フェイは火の力を解放する。
 店内にいる客全員、そしてリィザ、フェオラ、シーリスが目を閉じて身をかばった瞬間に、辺り一面に眩いほどの白光が満ちる。

「……………なっ!」

 二人は同時に声をそろえる。

―――――今のは浄化呪文!?

 最高位にある魔道師にしか使えないという、秘儀中の秘儀。どんな魔法をも無に帰すという、浄化呪文。それを、呪文の詠唱もなしに使う!? 一体だれが―――――。

「おまえら………こんなとこで魔法使うなら、どっかに行って好きなだけやれ。ここには関係のない客がいっぱいいるんだ。好き勝手やるんじゃない」

 そこに悠然と立っていたのはバーリス導師だった。

 

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