7 シリウスは、割合近くで金色の光が瞬くのを見た。 始めは魔法戦か何かかと思って危機感を覚え、避難しなければならないかと思ったが、そういう雰囲気ではないようだ。何かもっと、純粋で神聖な光―――攻撃よりは、どちらかと言えば司祭や僧侶が使う治療魔術や白魔術、浄化魔法のような感じがした。 「エフィーリア!?」 ふと、そんな気がした。心の中で、彼女に名前を呼ばれた気がしたときに、今の出来事。 あの閃光の瞬いた場所に行けば、もしかしたら、ずっと探していた彼女が見つかるかもしれない。 最長老とお世話になったアフィルメにエルフの集落の外まで見送られてからずっと、エフィーリアを求めて森の中を彷徨っていた。 女性の足、それも少女の足で、そんなに遠くまで行けるはずがないと思ったからだ。 しかし、シリウスは楽観視しすぎた。歩いてみるまで実感が湧かなかったが、森は樹海のように広い。日が経つにつれて、「エフィーリアを追う」と気負ってみたはいいものの、実際に見つけるのは不可能なのではないかと思い始めていた。 エフィルメからも、「気持ちはとてもうれしいしありがたいけれど、この森はとても広いから、見つけるのはきっととても大変だと思うの。だから、見つからなければ、気にしないで。エフィには世界樹の聖霊さまのご加護があるはずだから、きっと大丈夫」と言われていたのだ。 生粋の森人がそう言うくらいだ。本当に、この森の中から一人の人間を見つけ出すことは、たとえそんなに遠くに行っていないとしていてもとても困難なことなのだろう。 頭の中に、いつか地理の授業で宮廷教師に頭に叩き込まれた大陸の地図が頭に浮かぶ。 当時、エルフの森の広さに驚いたものだ。 そんな、途方に暮れていた矢先の出来事だった。 「きっと、あそこにエフィーリアがいる」 シリウスは、理由はないが確信できた。心で、繋がっている気がした。 兄代わりのシーリスがいたとはいえ、年は10近くも離れていて、身近に年の近い人間がいなかったシリウスは、気持ちは一人っ子と変わらなかった。そんなシリウスにとって、エフィーリアは妹のように思える存在だった。 シリウスはエフィーリアをとても可愛がっていたし、エフィーリアはエフィーリアで、シリウスにとても懐いていた。 だから、血の繋がりはないけれど、二人の間には心の絆があると信じられた。 「今、呼んだよな? エフィ―――」 親しみを込めて、シリウスは愛称で呼んだ。呼べば、そこにいなくても答えてくれそうな気がした。 「お願いだ。そこにいて……!」 (くそうっ…。こんなときこそ、馬があればよかったのに!) しかし馬は、「せっかくだからエルフィーア王国に行く前にエルフの森も少しだけ見ていこう」と、エルフの森へ入る前に立ち寄った近くの村に預けてきたので、今はいない。 「しかたない。走るか……」 |